「療育に通ってみては」。はじめてそう言われたとき、わたしは「りょういく」という言葉の意味さえよく分かりませんでした。教育とも違う、治療とも違う。ネットで調べても専門用語ばかりで、不安だけが増えていく。
わが家の息子には発達障害があります。診断のあと、よこはま港南地域療育センターにお世話になり、たくさん支えてもらいました。今は地域の小学校の特別支援学級に通っています。ここまで来られたのは、あの「最初のよく分からない一歩」を、誰かにそっと教えてもらえたからでした。
だから今、あのときのわたしと同じ場所に立っている人へ。この記事が、最初の地図みたいに、ほんの少し肩の力を抜くきっかけになればうれしいです。
療育とは?「治す」ではなく「その子に合った育ちを支える」こと
療育とは、発達に特性のある子どもが、自分らしく生活したり社会に参加したりできるように、一人ひとりに合った支援をしていく取り組みのことです。最近では「発達支援」という言い方もよく使われますが、ほぼ同じ意味だと考えて大丈夫です。
大切なのは、療育は「定型発達(いわゆる健常)に近づける」ためのものでも、「特性をなくす」ためのものでもない、ということ。その子が持っている力を伸ばし、苦手なところには合った工夫を見つけていく。いわば「その子サイズの育ちを一緒に探す場所」です。
児童福祉法では、こうした公的な支援を「障害児通所支援」「障害児入所支援」として位置づけています。多くのご家庭が利用するのは、通いながら受ける「通所支援」のほうです。
療育の種類:通う場所は大きく分けて2つ
通いで受ける療育は、子どもの年齢によって主に次の2つに分かれます。
- 児童発達支援(0歳〜就学前):未就学のお子さんが対象。遊びや生活の中で、コミュニケーション・身辺自立・運動・言葉などを、その子のペースで育てます。
- 放課後等デイサービス(小学校〜高校/6〜18歳):就学後のお子さんが放課後や長期休みに通う場所。生活に必要な力を育てたり、創作・運動・地域交流の機会をつくったりします。
このほかに、わが家がお世話になった地域療育センターのように、相談・診断から初期の療育までを担ってくれる公的な施設もあります。病院やクリニックで受ける医療型の療育(言語聴覚療法・作業療法など)や、民間の発達支援教室もあります。入り口はいくつもあるので、合うものを選んでいけば大丈夫です。
療育では具体的に何をするの?
「通って、実際は何をするの?」これは、わたしがいちばん知りたかったことでした。内容はその子の特性・年齢・施設によってさまざまですが、たとえばこんなことに取り組みます。
- 遊びを通したコミュニケーションの練習(順番を待つ、やりとりする)
- 着替え・トイレ・食事などの身辺自立のサポート
- 体の使い方を育てる運動あそび・感覚あそび
- ことばや指先を使う遊び(言語・微細運動)
- 小集団での活動を通した、お友だちとの関わりの練習
わが家の息子も、最初は「遊んでいるだけ?」と思いました。でも、その「遊び」こそが、本人のペースで力を育てるための工夫の連続だったと、あとから気づきました。
療育は何歳から?「早いほうがいい」と「焦らなくていい」は両立する
療育は0歳から始められます。発達の土台ができていく乳幼児期は関わり方の工夫が届きやすい時期とも言われ、「早期からの支援」が大切にされています。
ただ、これは「早く始めないと手遅れ」という意味ではありません。気づいたとき、動けるときが、その子にとっての始めどきです。健診で指摘された、保育園から勧められた、なんとなく気になる。どんなきっかけでも構いません。焦りと罪悪感は、いったん横に置いておきましょう。
療育の受け方:「受給者証」を取るのが基本の流れ
通所の療育を利用するには、お住まいの市区町村が発行する「障害児通所受給者証(受給者証)」が必要になります。流れはおおよそ次のとおりです。
- 市区町村の窓口(障害福祉課など)や地域療育センターに相談する
- 利用したい施設を見学・相談する
- 受給者証を申請する(必要に応じて医師の意見書や面談など)
- 受給者証が交付されたら、施設と契約して利用開始
わが家も、まずは地域の療育センターに相談するところから始まりました。最初は緊張しましたが、「相談していいんだ」と思えただけで、ずいぶん気持ちが楽になったのを覚えています。
ここで知っておいてほしいのが、受給者証は「障害者手帳」や「療育手帳」がなくても取得できるということ。診断名がついていなくても、医師や自治体が「支援が必要」と判断すれば利用できるケースが多いです。「まだ診断がないから」と諦めなくて大丈夫です。
(※療育手帳は、療育を受けるための証明ではなく、福祉サービスや手当を受けるための「障害の証明書」です。受給者証とは役割が違います。)
費用はどのくらい?3〜5歳児クラスは無償化の対象
2019年10月から始まった幼児教育・保育の無償化により、満3歳になった後の4月から就学前まで(3〜5歳児クラス)の児童発達支援などは、利用者負担が無償になりました。
0〜2歳のクラスや就学後(放課後等デイサービス)については、世帯の所得に応じた月額の上限負担があります。実際の負担額や対象は自治体やご家庭の状況で変わるので、正確な金額は必ずお住まいの市区町村の窓口で確認してください。
「効果あるのかな」と迷ったときに
療育を続けていると、「これって意味があるのかな」と立ち止まる日がきっと来ます。すぐに目に見える変化が出るものではないし、子どもによって合う・合わないもあります。
わが家も、療育センターから就学に向けて道を探し、今は小学校の特別支援学級に落ち着きました。振り返ると、その時々で「合う場所」を選び直してきた連続でした。ひとりで抱え込まず、施設のスタッフや相談支援専門員に「今のうちの子に、この内容は合っていますか」と聞いてみてください。内容や場所を見直すのも、立派な前進です。療育は「正解を当てる試験」ではなく、その子に合うものを一緒に探していく長い相談なのだと思います。
まとめ
- 療育(発達支援)は「治す」ではなく、その子に合った育ちを支える取り組み
- 通う場所は、未就学なら児童発達支援、就学後なら放課後等デイサービスが中心。相談の入り口として地域療育センターも頼れる
- 0歳から始められる。気づいたとき、動けるときが始めどき
- 利用には受給者証が必要。手帳や診断がなくても取得できる場合が多い
- 3〜5歳児クラスは無償化の対象。詳しい費用は自治体で確認を
分からないことだらけで当然です。最初の一歩は「完璧に理解すること」ではなく、「とりあえず相談の電話を一本かけてみること」で十分。あなたとお子さんのペースで、ゆっくり進んでいけますように。
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(参考:厚生労働省「障害児通所支援」、わが家の窓口は横浜市栄区 こども家庭支援課でした。
※受給者証の申請窓口や担当の地域療育センターは、お住まいの地域によって異なります。「お住まいの市区町村名 + 障害児通所支援(または受給者証)」で検索してみてください)
※この記事は制度の概要をやさしくまとめたもので、医療的なアドバイスではありません。診断や支援の必要性については、かかりつけ医や自治体の窓口にご相談ください。制度の詳細・最新情報は各自治体の公式情報をご確認ください。


